このメンバーが顔を揃えるのは1994年の“秋味”(『古田新太之丞東海道五十三次地獄旅~ハヤシもあるでョ!』)以来、31年ぶりらしいですね。第一印象では「そんな揃えるんだ? まさか解散公演なのか?」なんて思いました。って、こんなことを言ってしまってサプライズで千穐楽に「実はこれが最終回」なんて言われたらどうしようと思っているところです(笑)。そして『忠臣蔵』といえば私にとっては、劇団そとばこまちの小松純也さん脚本の『冬の絵空』。これはそとばこまち以外でもプロデュース公演として何度も上演されている戯曲で、私は1992年版では清水一学、2009年版では吉良上野介を演じているんです。ちなみにこの作品も『忠臣蔵』の話に歌舞伎役者を絡ませる構成になっていたので、今回の『爆烈忠臣蔵』と原点が近い、かもしれないですね。とはいえ、実は私は『忠臣蔵』の本編を観たことがなくて。
むしろ『忠臣蔵』をオマージュした、翻案した作品ばかりを観ているからストーリーもパーツごとの断片的な記憶しかないんです。ですが、私と同じくらいの知識のお客様でも今回の『爆烈忠臣蔵』はお楽しみいただけます。なぜなら、中島かずきさんの悪ノリでこの舞台も『忠臣蔵』自体はある意味オマージュ、あるいはインスパイアされているだけで、他にも様々な歌舞伎やシェイクスピアやお芝居が引用、サンプリングされているので、知っている人はもちろんですが、知らなくても充分楽しめる作品になっていると思います。
小池栄子さんは新感線に絶対合う人ですし、毎回楽しんで参加してくださっているんですけどやはり『鎌倉殿の13人』で北条政子を演じられたことでまたグンと格が上がってしまってね。よく出ていただけたな、ありがたいなと思っています。今回テンションの高い役なので、お身体や喉、体力だけは気をつけつつ、また一緒に遊んでいただければと思っています。向井理さんとは『狐晴明九尾狩』(2021年)で共演させていただいた時、私がキツネの向井さんにそそのかされて悪い奴になるというくだりがやたら楽しかったんですよ。だって、あの二枚目に斜め後ろ20cmから話しかけられたら誰だって恋に落ちるってものです。しかもあのルックスなのに、意外と笑いの勘どころをわかっているところも面白い。その部分を今回は大いに発揮していただければ、と。そして早乙女太一くんは、もはや新感線には8度目の参加ですからね。ビジュアル撮影では女形の扮装をされていますが、本編で果たしてそういうシーンがあるのかどうかは、どうぞお楽しみに。また、この強力な3人に加え、久しぶりに羽野晶紀、橋本さとしも出ます。当然ながら何の心配もないですが。なにしろ初夏公演の『紅鬼物語』では古株劇団員が私しかおりませんで心細かった分、秋冬は古株がいっぱい出てくれて、むしろ渋滞して衝突しそうです。
中島かずき作品としては『花の紅天狗』(1996年、2003年)や、その続編の『月影花之丞大逆転』(2021年)のようなバックステージものといいますか、あれの歌舞伎版、江戸版みたいな作品になっていて。これまた楽しそうだなと思っていたんですが、意外と台本を読むとプロットからしっかりと込み入っておりまして、ただ単純なバカ騒ぎのできる作品でもなさそうです。だからネタものと、いのうえ歌舞伎の中間くらいのイメージでしょうか。“チャンピオンまつり”と銘打たれているから、もっとおちゃらけるかと思ったら意外と仕掛けも大掛かりでスケール感がありますので、ストーリー好きの方にもお楽しみいただけるのではないかと思っております。
きっかわきつえもん……って、言いづらいですね。もう、名前からしておそらくキツイ人ですよね。大勢でワッと盛り上がっている時に正論を言い、冷や水をかけて場を冷ます人っているじゃないですか。はい、それが橘川橘右衛門です。言うなれば、劇団の中での私の役割をそのまま舞台上でやっているようなものですから、役作りはラクかもしれません。非常識な人たちの中で唯一常識的な、頭の固い男。それが私であり、橘川橘右衛門です。楽しく演じられればいいなと思っております。
45周年といっても、私がいるのはそのうちの40年ほどなんですよ。しかも、50周年ならまだしも45ってわりと中途半端じゃないですか? でもまあ、それを記念してここまでのメンバーを揃えたんだと思うので、ともかくみんな元気に、とりいそぎ次は50周年を目指していきましょうか!
ゲームに関してはこれまでしつこいくらい語ってきたので、ここは“リスニングバカ”、ということにしておきます。単に音楽好きなので、家にいてゲームをしていない時、PCで作業しているような時はずっとSpotifyで音楽を聴いているんですよ。Spotifyって年末に統計が出て「あなたは1年間で何曲聴いて何時間聴きました」と教えてくれるんですけど、それがどうやら、私は世界の2%の上位に入ってるみたいで。昔はCDを入れ替えながらでしたけど、今はサブスクでそのまま聴き続けられるので、作業がもうはかどるはかどる。嬉しい世の中になったものです。
中島さんには「そろそろ台本にフリガナをふっておいてください」。時々難しい言葉、あるいは時代によって古語を使用されることがあるんですが、さとしくんとかが読めなくて困っていたりするので。いのうえさんには「そろそろみんな60歳近辺の人ばかりになってきてるので、手加減するなり、分散するなりしてあげてください」、ということでお願いします。
(あわね・まこと) 1964年8月7日生まれ 大阪府出身 1985年『ヒデマロ2~銀河烈風斎の逆襲』より劇団☆新感線に参加。冷酷な悪役からインテリジェンス漂う役どころまで多彩なキャラクターを演じ、劇団内外で広く活躍。また、人物の観察力が鋭く、イラストも得意なことから雑誌のコラムなどでもその多彩な一面を見せる。劇団公演以外の近年の主な出演作品に、【舞台】『FOLKER』(25)、『BURAI3-最終章-』『バンピーラダーズ』(24)、『嵐になるまで待って』(23)、『フェイクキラーズ』(22)、『明治座で逆風に帆を張・る!!』『りぼん,うまれかわる』『今日もしんでるあいしてる』(21)、『オリエント急行殺人事件』『浦島さん』(20)、【映画】『大怪獣のあとしまつ』(22)、『恐怖人形』(19)、『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』(11)、【ドラマ】『半沢直樹』(20・TBS)、『仮面ライダーウィザード』(13・EX)、『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』(12・TX)、『11人もいる!』(11・TBS)などがある。