橋本じゅん
コメント

橋本じゅん

――劇団の45周年記念公演でもある『爆烈忠臣蔵』に出演することになり、まずはどう思われましたか。

「いよいよ来たか、そら、来るわな」と思いました(笑)。しばらく劇団の本公演から離れていたんですけど、毎回観に行くたび「みんなよくやるなあ」ってつくづく感心しつつ「これを俺がやるとなったら?」と想像すると、だんだん気が遠くなって他人事みたいに思えてもきて。だから、いざ本当に自分がやるとなったらちょっとビビリました。俺、できるのかなって。そもそも年齢的にも、すっかりジジイになりましたので(笑)。まあ、でも今やらないとダメでしょう!って、そういう気持ちもあります。

――じゅんさんが演じる荒村荒蔵は、現時点ではどういう役まわりだと思われていますか。

今のところ、おぼろげにイメージはいくつかありますけど、稽古に入っていのうえさんの雛形を見てから、という気持ちが強いです。いのうえさんが実際にやって見せてくれるのを一度飲み込むのが、一番かなと。

――小池栄子さんと親子役ですね。

台本読んでて、昔、村木よし子ちゃんが轟天の格好におさげをつけただけという、俺とほとんどそっくりで会話も「コ、コー」「ココッ、ココー!」としか言わない女の子をやってたことがあって、それを思い出しました。まあ、あのメイクしたら誰でも轟天に近づけるんですが、栄子ちゃんのあのパワーなら「コー!」って言うだけで、親子に見えると思います。

――久しぶりに新感線オールスターみたいな顔合わせにもなりますね。

そうですね。大阪芸大の4年生、3年生、2年生、1年生でやる、という感じです。ちなみに4年生が古田くんと僕、3年生が(橋本)さとし、(高田)聖子が2年生、羽野とインディと右近が1年生で、そのメンツでいつも大学の食堂でワーワーしてました。みんなでワーワー言うてるのは今も変わらないので、そう考えるとなんだか世間様に申し訳ないような気がします。

――今回、タイトルに『忠臣蔵』が入っていますが、この演目自体には何か思い入れがあったりしますか?

実は、父の郷里が播州赤穂なんですよ。だから、駅前には“大石内蔵助、生誕の地”みたいな幟が立っていたりします。それと、そとばこまちさんの『冬の絵空』という作品に2回出ていまして、最初は堀部安兵衛役で、2回目の時には大石内蔵助役をやらせてもらっていますので、そこそこ思い入れはありますね。ただ、今回の作品で僕が演じる荒村荒蔵って、他の人と普通に会話ができるのかなあ、ちょっと心配です(笑)。

――確かに荒蔵さんは、ちょっと特殊なキャラクターではあるかもしれません。

動物と人間の狭間というか、むしろ動物寄りな人かもしれない。だから『忠臣蔵』も、あの人にとってはどれだけ重みのある物語なのだろう?と、そこがちょっとよくわからないんです。だけど、中島かずきさんにとって俺のイメージって、こういうことだったのか、とも思いました(笑)。その思惑に没入してしまうのか、それともそこから多少距離をとって、お客様に綺麗にパッケージして提示するのか。この先はいろいろな方向の可能性がありそうなので、あとはいのうえ大先生の判断を待って見極めたいなと思います。

――今回の公演で目標にしたいこと、成し遂げたいと思っていることなどはありますか。

当たり前のことですが、やはり幕を開けて、しっかり降ろすこと。いまや、当たり前が当たり前じゃないので、今更ですがあえて「完走すること」。そして新感線に戻ってきたのは自分がやりたいからっていうのもありますが、やはりお客様に喜んでいただきたいから、というのも最大の動機なので。だから、みなさんに最初から最後までたっぷり楽しんでもらいたい。そのためにどうしたらいいか、全力を尽くして考える。それを成し遂げてみたいですね。

――個人的に楽しみにしていることは。

橋本さとしくんのボケっぷりです。台本を読んでいるだけで、既に随所に笑えるところがあったので、おそらくそれ以上にいろいろなところで爆発するはず。そこを楽しみにしています。

――お客さまに向けてメッセージなどありましたら、お願いします。

もう、久しぶりなんで早く本番をやりたいな、早くみなさんに観ていただきたいなという気持ちでいっぱいです。松本公演も大阪公演も東京公演も、いずれも大きな劇場ですし、そこで大勢のみなさんの顔を最後のカーテンコールで舞台の上からしっかり見られるなんて、すごく興奮してドキドキワクワクします。その瞬間を味わえたら自分もきっと元気になれるだろうし、お客さんもより元気になって帰っていただけたら嬉しいですし。劇場でお会いできるのを、楽しみにしています!

今回は芝居バカのお話ですが、あなたは何バカですか?

“釣りバカ”を卒業しつつあるので今、何バカかと聞かれたら“体験バカ”かな。いろいろと体験してみるのが好きなんです。この間は、マシンピラティスの体験に行ってきました。やってみたら、整体とスポーツジムと温泉を同時に行って3で割ったような感覚が残ってて「これはいいな!」と思いました。最近はとりあえず興味があるものは、体験しまくるようにしています。すべては自分をスキルアップさせたい!という気持ちで始めたことなんですけどね。

中島さんといのうえさんに稽古前に言っておきたいこと

いのうえさんには、また物産展デカとして「そう来たか!」みたいな美味しい差し入れを持って来てもらいたいです。それも久しぶりなので、本当に楽しみです。中島さんには、じゃあ、そのいのうえさんの買い物を割り勘にしていただいて、補助をお願いしましょうか(笑)。

profile

(はしもと・じゅん) 1964年2月25日生まれ 兵庫県出身 1985年『銀河旋風児SUSANOH』より劇団☆新感線に参加。役作りのために激しいトレーニングや食事制限をするなど、ストイックな姿勢で劇団になくてはならない存在となり様々な公演に出演する一方で、他劇団の公演や、映画、テレビなどにも多く出演している。劇団公演以外の近年の主な出演作品に、【舞台】『ミセン』(25)、『レ・ミゼラブル』(21・19・17)、『キレイ―神様と待ち合わせした女―』(19-20)、【映画】『サラリーマン金太郎【魁】編』『サラリーマン金太郎【暁】編』(25)、『劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵』『ラストマイル』『四月になれば彼女は』『カラオケ行こ!』(24)、【ドラマ】『怪物』(25・WOWOW)、『ダメマネ!―ダメなタレント、マネジメントします―』(25・NTV)、『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(25・CX)、『憶えのない殺人』(25・NHKBS)、『ブギウギ』(23・NHK)などがある。