古田新太
コメント

古田新太

――今回は生田斗真さんと中村倫也さん、“TTコンビ”との共演となりますね。

斗真も倫也も、他の現場で共演はしているんだけど、これまで新感線では一緒にやったことがなかった。だけど劇団にはもう何回も出てくれている二人だから、信頼度は高いですね。以前から出演が決まるたび、斗真からは「何でまた出てないんですか?」、倫也からは「新感線に呼ばれたから古田さんいると思ったのに」って言われていたんです。

――では、そんなお二人とようやく新感線でご一緒できる、と。

しかも、いっぺんに二人と共演できるんならこれは手っ取り早いや、と(笑)。だけど、斗真とは『土竜の唄 香港狂騒曲』(2016年)でしか共演していないんだよね。倫也とは『ロッキー・ホラー・ショー』(2011年)以来。その前は『ヤンキー君とメガネちゃん』(2010年)というドラマでも共演していたんだけど、その頃は倫也はまだその他大勢の生徒役だったから。

――当時は、どんな印象だったんですか。

目立たなくて地味な子だったし、学校のシーンにしか出ていないから。オイラはオイラで家庭のシーンにしか出ていないから、あまり絡みはなかったんです。ま、斗真も倫也も、会えば飲みに行く間柄ではあったけど。

――本日のビジュアル撮影の段階では、まだ台本は読まれていないとのことですが。

ざっくりとしたあらすじは聞いていますけど、南北朝時代の設定だとわかった時点で「めんどくさいことするなぁ!」と思いました。

――どうしてですか(笑)。

だって、動きにくいから。

――ああ、衣裳が。しかも古田さんの場合。

そう、ゴノミカド役、ということはつまり“ミカド”だから。

――普通の人なら、まだともかく。

この前の大河ドラマ『どうする家康』(2023年)でも、足利義昭をやったばかりなんですけど。義昭は室町時代の最後の将軍だけど。あの時も周りは武士ばかりでみんな動きやすい格好だったのに、オイラは“おじゃる”的な格好だったから、それだけでもついイライラしていたのに。南北朝時代ということは、もっと古い時代になるわけじゃないですか。ま、平安時代じゃなくて良かったなとは思うけど(笑)。

――今日の撮影の衣裳も、見ているだけで大変そうでした。

だけどあれは撮影用だから、本番ではもう少し身軽になるのかもしれませんが。それでもミカドだと、立場的にそんなに軽装にはならないでしょうね。 ならないですね。あと、メイクもめんどうくさそうだなと思っているんです。

――やはり、白塗りにするんでしょうか。

基本はそうなんじゃないですかね。なんせミカドだから。だけど白塗りはともかくとして、点々眉毛と、髭がさらにめんどうくさいことになりそう。

――髭もあるんですか。

ミカドとしては、髭はつけなきゃいけないことになるんじゃないかと思います。もしかしたら付け髭で舞台やるの、初めてかもしれません。

――え、本当ですか。

これまでムカデやら犬やら、いろいろな役をやってきたわりに。

――意外にも初体験のことがあったんですね。ちなみに、髭は生えるほうなんですか?

生えますよ(笑)。そうか、じゃあ、本番の期間は顎鬚だけでもちょっと伸ばしてみるかな。でも白髪だらけだから染めなきゃいけないのか。どうするかは、まだ様子見ですね。あと今回オイラ、関西弁なんですよ。

――意外に、珍しいのでは。

新感線でオイラが関西弁で芝居することがまずなかったから。時代劇でも比較的、江戸前の話が多かったですし。

――ご自分としては、やりやすいですか?

やりにくいです。だけど、確かに公家然とした公家ではないからずっと“おじゃる”言葉のままでいるわけにもいかないし、とはいえどこまで砕けた関西弁でしゃべっていいのか。基本的には京都の人なんだから“どすえ”なんじゃないかと思うんですけど。どうするつもりなんでしょうね。そこらへんは、ちょっと稽古してみないとわかりません。

――斗真さん、倫也さん以外の共演者に関しては、今回の顔ぶれはいかがですか。

なぁちゃん(西野)も、りょうちゃんも、既に新感線の舞台では一緒にやっているし、二人共ちゃんとしてるし可愛いからとても楽しみです。

――舞台俳優としてのお二人は、いかがですか。

素晴らしいと思います。どちらも芝居がブレないですし。芝居にブレがないというのは一番大切なことなんです。「こうして」と言われたら変えるけど、それも勝手な変え方はしない。その点で、すごく信頼できる。それは斗真も倫也も同様です。

――今回、アクションにも挑戦してもらうみたいです。

二人とも体技はちゃんとしてるしリズム感もいいから、動き的には何の問題もないと思います。とりあえず、オイラとしては楽させてもらえりゃ、ありがたいんですけどね。

――どうでしょうね(笑)。でもミカドなら比較的、率先して戦うわけではないかもしれない?

ザッと台本をペラ見してみたら、後半えらいしゃべってるな……とも思ったんですけど。

――そこはチェック済みなんですね(笑)。

出番は、少なきゃ少ないほど嬉しいですから。上演時間も、もっと短くしたほうがいいと思うんですけど。

――あとメインキャストとしてはもう一人、粟根さんもいらっしゃいます。

そういえば、この前の『天號星』(2023年)に出ていた(山本)千尋と(久保)史緒里は、粟根さんのことを“ジェントル”って呼んでて、目がハートになっていました。

――気遣いの人だから、きっと優しくしてもらったんでしょう。

マコリンはあの二人と絡むことはそんなにないはずだから、きっとカーテンコールの時に舞台袖でエスコートしたり、「どうぞ」って出るタイミングを教えてあげたりしていたのかもしれません。

――今回の物語は、生田さん演じるヒュウガが掲げる信条がひとつのキーワードとなりますが。それにちなんで、舞台に立つにあたり古田さんが一番大事にしている信条は何ですか。

余計なことはしない。本番が始まったら、余計な工夫もしない。

――工夫をするなら稽古場の段階で。

そう、稽古場でやる。そして「やめろ」と言われたら、すぐやめる。深追いは、しない。お客さんが笑ったからといって、調子に乗らない。

――基本的に、本番中はあまり変化させないということですか。

オイラは、まずやらないです。公演途中に、いのうえさんに「こうやって」と言われた時はやりますけどね、「チッ!」とか言いながら(笑)。でも自分の意志でやることはない。

――それは先ほど言っていた芝居がブレない、ということにもつながるわけですね。

これはいのうえさんもそうなんですけど、お客さんが喜ぶと演じている本人たちも楽しくなって、どんどん余計な部分を増やしていくんですよ。そのせいで上演時間が長くなるという計算が、君たちにはできないのか?って思います。上演時間を短くする、という努力こそが一番大切なことなのに。

――早く帰りたいから、ですか(笑)。

そうそう(笑)。早く終わって怒るスタッフもお客さんもいないんだから、早いに越したことはないです。

――また今回は“ピカレスクロマン”ということで、主役を筆頭に登場人物に悪い人間が多そうです。悪役を演じることに感じる魅力、面白さ、難しさとは。

若い頃は悪い役、好きだったんですけどね。一時期、殺人鬼の役しかやりたくないとまで思っていたくらいに。

――またそれが似合っていました。

今は、そうでもないな。かずきさんもいのうえさんも“ピカレスクロマン”、好きですよね。よくわかってないけど、ピカレスクって悪党じゃない? オイラは愉快犯のほうが好きなので。

――悪党と愉快犯では、ちょっと違う。

楽しくて人殺ししてるようなヤツ、サイコパスのほうが好きなんです。ピカレスクの場合は基本的に、野望のために悪いことをするわけじゃないですか。自分の欲とか、自分がのしあがるためにとか、お金のために、悪だくみをする。オイラは単に自分の喜び、性的興奮のためだけでとかのほうが好みなんです、今は。だから劇団外で自分でプロデュースする時は作家に相談して、基本的にサイコパスを主役にしていて。でも今回は、まずは斗真と倫也がってことなんだろうと思うので。

――ゴノミカドも悪い人なのかもしれないけれど、そこともちょっと違う。

なにしろ台本はペラ見しかしてないけど、きっと「パーっとやったらええねん!」みたいな人なんじゃないですかね。

――ペラ見なのに、ちゃんと把握していますね(笑)。では、今回の舞台に取り組むにあたっての目標やテーマなどは。

とりあえず、いつもと一緒です。ゲストのみなさんが機嫌よくやってくれればいいし、あとはお客さんが観て普通に「ああ、面白かった!」と言える作品を作るように努力する。それだけですね。

――では最後に、改めてお客様に向けてメッセージをいただけますか。

オイラが出ているんですから、なるべくハレンチな作品にしたいなとは思っています。時代にそぐわない、ドラマでもやっていましたけど不適切な言葉もどんどん使っていくつもりですので、そこんとこヨロシク!(笑)

thank you so much.

奥さんです。理由は、家の中でも外でもあらゆることをすべて許してくれるから。素晴らしいでしょ、ホント素晴らしいんですよ。もう、これはサンキューとしか言えないでしょう!!

profile

(ふるた・あらた) 劇団☆新感線の看板役者。大阪芸術大学在学中の1984年から劇団☆新感線に参加。エネルギッシュで迫力ある演技には定評がある。劇団公演以外の舞台にも積極的に参加し、自身で企画・出演を務める演劇ユニット“ねずみの三銃士”などもある。活躍の場は広く、バラエティ番組やCM出演、コラムニストとして書籍も出版している。2024年に第45回松尾芸能賞優秀賞を受賞。劇団公演以外の近年の主な出演作品に、【舞台】『ラヴ・レターズ』(24)、『パラサイト』(23)、『ロッキー・ホラー・ショー』(11・17・22)、『衛生』(21)、【映画】『サイレントラブ』(24)、『ヴィレッジ』(23)、【ドラマ】『不適切にもほどがある!』(24・TBS)、『となりのナースエイド』(24・NTV)、『お別れホスピタル』(24・NHK)などがある。現在バラエティ番組「EIGHT-JAM」(EX)にレギュラー出演中。