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中島かずき

「24年は生田斗真39(サンキュー)公演で中村倫也も参加、古田も出る。しかもリベンジ博多座、東京は明治座、大阪はフェス」とプロデューサーから聞いて、「だったら、歌あり踊りありの賑やかで楽しい演目がいいね」と、道中物で二人の盗っ人コンビはどうだろうと考えた。盗みのアイデアもある。共演者も決まり、いのうえとも「これでいこう」と合意してプロットにかかったのだが、なぜだかこれがどうにも進まない。本当にこれでいいのか、斗真君倫也君やりょうさん西野さん、そして古田君に納得のいく役が書けるのか。なんだか上っ面だけの芝居になりそうで躊躇してしまう。

改めて、自分が今、斗真君に一番書きたい役はなんだろうと考え直した。そのときに浮かんだのが、「顔がいいだけで日本を支配しようとする冷酷な男」だった。小学生の時に読んだ『ジャパッシュ』というマンガが大好きで、こういうタイプの話をいつか書きたいとは思っていた。今こそそれにチャレンジしろということか。

だったら他のキャラも悪い方がいい。己の野望欲望に忠実に生きそして死ぬ、互いに裏切り裏切られる。それなら時代設定は南北朝はどうだろう。

思い切ってこちらに舵を切って考え直すと、あら不思議、倫也君も古田君もりょうさん西野さん、粟根君を初めとする劇団員も含めて、あれよあれよという間にキャラクターが見えてきた。動き出した。 というわけで、今回はピカレスクロマンです。但し、度を越した人々がひしめき合って陽気に己が己がと主張します。歌って踊って戦います。ダークでシリアスもあるけれど、むしろ派手で絢爛で極彩色な人間の業の玉手箱のような舞台になるんじゃないかと思います。それがバサラなのかもしれません。ご期待下さい。

profile

(なかしま・かずき) 1985年『炎のハイパーステップ』より座付き作家として劇団☆新感線に参加。座長いのうえひでのりとは高校演劇を通して知り合う。『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』など歴史や神話をモチーフに物語性を重視し、複雑に絡み合う伏線を多用した脚本は、疾走感とグルーヴ感あふれる演出とあいまって劇団の代表作となっている。また、劇団朱雀『桜吹雪八百八町』(23)、『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』(21・23)、『No.9 -不滅の旋律-』(15・18・20)、『真田十勇士』(13・15)、『ジャンヌ・ダルク』(10・14・23)、『戯伝写楽』(09・12・18)など、外部への書き下ろし作品も多数。2024年12月には歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』が上演予定。演劇以外にもコミック原作や、【テレビ(脚本)】『封刃師』(22・ABC/EX)、『ふたがしら』(15・WOWOW)、『仮面ライダーフォーゼ』(11・EX)、【劇場アニメ(脚本)】『プロメア』(19)、『ニンジャバットマン』(18)、『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14)、【テレビアニメ(脚本・シリーズ構成)】『バック・アロウ』(21)、『BNA-ビー・エヌ・エー‐』(20)、『キルラキル』(13)、『天元突破 グレンラガン』(07)を手掛けるなど活躍の場は広い。

【受賞歴】第47回岸田國士戯曲賞(「アテルイ」)