三宅健

三宅 健 コメント

この作品に出演のお話をいただいた時、正直「僕に務まるのかな」と思いました。『オセロー』と言えば、以前観た蜷川幸雄さん演出の吉田鋼太郎さんのイメージが強く残っていたり、そもそもこの作品の初演は橋本じゅんさんですから。いずれにしても、全く僕のイメージとは異なる方ばかりが演じているので自分には難しいのではないかと思いました。でも、いのうえさんに直接お会いして話をした時に、今回は蜷川さん演出のシェイクスピア作品とも、橋本さんのオセロとも別モノとして考えてもらいたいとおっしゃっていただいて。「心配しないで、大丈夫だから!」と、心強いお言葉をいただきました(笑)。
台本を読んだ感想としては、原作のシェイクスピアの『オセロー』が関西のヤクザたちに設定が置き換えられることによって、すごくわかりやすくなっているな、と。これまでシェイクスピア作品に触れたことがない方でも、すんなりとストーリーが入ってくるものになっていると感じました。その中で僕が演じる亜牟蘭オセロという人物は……、きっと本質的にはすごくいい人なんでしょうね。そして純粋過ぎるがゆえに、人の意見に左右されてしまうし、人を信じ過ぎてしまう。そんな人なのではないかなと現時点では思っています。
そして、全く自分とは異なる人物像なはずなのに、この物語にどこか今の自分と重なる部分を感じていたりもします。
これまでも劇団☆新感線の舞台には何度も足を運んでいるのですが、以前からその舞台で拝見している劇団員の方々が今回のカンパニーにもいらっしゃるので、キャストの顔ぶれを見るだけでザ・新感線!という感じでワクワクしています。ですからその中に自分が入るということに関しては、いまだ違和感があります(笑)。ほとんどの方と初共演になりますが、村木仁さんとは実は僕が20歳の時の初舞台(『二万七千光年の旅』(2000年))でご一緒していたんです。久しぶりに共演できるのが、とても楽しみです。それに新感線の舞台を観ることはあっても、どんな風に稽古をして、いのうえさんによってどんな演出がなされて、あの舞台が出来上がっていくのかということは未知の世界です。それが体験できるということも今回の楽しみのひとつです。 それから今回は主に関西弁を使うことになるので、そこがすごく難しいなと台本を読んだ段階から思っています。同時にそれが逆にとてもやりがいがあるなとも感じています。方言って親しみが感じられて情緒があって僕はすごく好きなんです。方言はその地方だけの独特な言葉があって、それぞれの地方の良さがあふれている。また、毎日の暮らしの言葉である方言が入ってくることで、その土地の人たちの息吹が感じられ、土地の人たちの間でしか通じない言葉だからこそ通じ合える何かがある気がします。自分が役と向き合う時にひとつの手助けになってくれそうな気もしています。加えて、特に今回はふだんの自分なら絶対に言わないような台詞を、役として発することができる面白さもあります。役柄としても、こういうキャラクターは初めてなので、役として存分に楽しみたいです。
実はいのうえさんとは偶然会うことが多いんです。劇場だけでなく、散歩しているいのうえさんを見かけることがしょっちゅうあって。メタルTシャツを着て、帽子を目深にかぶった人が前方から歩いてくるなと思ってよくよく見ると、いのうえさんだったりする(笑)。僕の出ているお芝居もよく観に来てくださって楽屋までわざわざ来てくださったことも何度かあります。そんなこともあって、ずっと、いのうえさんとはいつかご一緒したいなと思っていたんです。しかも僕自身、新感線やいのうえさん演出で大好きだなと思った作品は、青木豪さんが書かれているものが多いんですよ。たとえば、うちのメンバーの森田剛が主演の『IZO』や『鉈切り丸』。
今回は、その青木豪さんといのうえさんとのタッグ作品ですからね。オセロ役は、自分自身にはないものばかりを求められそうな気もしていますが、役の上だからこそできることを存分に楽しみたい。新感線色に染まれたらいいなと思っています。ですから自分自身も新しい、まだ見ぬ自分を発見できるような気がしています。お客様にもぜひ、そんな新しい自分を見てもらいたいですし、もちろん悲劇ではあるのですがシリアスなだけではなく、新感線が持つ独特の笑いがたくさん散りばめられている作品になると思います。劇場でいろいろな感情を動かしてもらえたら嬉しいです。

エピソード:これは悲劇だ!

飲み物を、本当によくこぼすんです。コーヒーを絨毯の上にこぼしたり、お醤油をソファの上にこぼしたり、車の中でもよくやるのでレザーシートが味噌汁まみれになったことがある。最近は、もう自分がこぼすのはわかっているので汁物は車内に持ち込まないようにしています。でもやはり最近も新しく買ったレザーの鞄の中に入れていたペットボトルの蓋がちょっとだけ開いていて、車の助手席を水浸しにしてしまいました。そうなる度、oh my God! 悲劇だ……と思います。