粟根まこと

粟根まことコメント
粟根まこと

――『天號星』への出演にあたり、今の粟根さんのお気持ちとしては?

劇団としては一作おいての中島かずき作品ですが、タイトルも重々しいからちょっと渋い話なのかなと思って読んでみたところ、意外とポップな作品でした。古田くんが動きたくないから太一くんと入れ替わる設定なのかな……ん? いや、でも入れ替わるということは動かなきゃいけなくなるのか。まあ、身体がなまっててあまり動けないということになるのかもしれませんが。つまり古田くん主演でありながら本人がガンガンに動く必要はなく、結果的にはやはり太一くんがたくさん動くことになるのでしょう。しかもその中身は人間味のある半兵衛だということは、早乙女太一くんが人間味溢れる役を演じることになるんですよね。古田くんが貫禄ある役や滅法強い役というのはお手のものでしょうし、逆に情けない役のほうもお手のものですから、それに相対する立ち位置に太一くんが来ることで新たな面白みが発生しそうです。観ていても楽しいだろうし、演じる側も楽しいんじゃないでしょうか。太一くんもきっと、あまりやったことないテイストの役割をすることになりそう。そんな二人を軸に周りが振り回されていくという、ドタバタコメディに近い形のポップな作品になるんじゃないかなと私は予想しています。

――今回、粟根さんの役回りとしては。

わかりやすい悪奉行です。池田成志さんが悪商人で、それと結託する悪奉行。成志さんには久しぶりに登場していただきますが、前回の『けむりの軍団』(2019年)の時は古田くんとバディで最初から最後まで出ずっぱり、喋りっぱなしで大変な役回りをしていただきまして。いや、あれは裏で見ていても本当に頭が下がりました。身体も喉も大変なことになりながら、全力で役に向かっている姿には涙しましたから。その成志さん、今回はわりとスポット参戦的な役回りで、僕とセットでちょいちょい出てきてはいかにも悪役然として偉そうにしているという役です。前回よりは楽をしてもらえるんじゃないでしょうか。僕としては出番が一緒なので、悪コンビを楽しめればいいなと思っております。それから、私の手下としてコンビになるのが今まであまり絡んだことのない劇団員なので、それについても楽しみです。

――絡んだことのない劇団員?

吉田メタルのことです。これまで、だいたい別チームになっていたもので。

――意外なところに新鮮味を感じている、と。

人の配置に、作家も苦労しているんだろうなと思いました(笑)。また、いわゆる長屋チームのほうでは劇団員たちが演じている中に久保史緒里さんという新風が吹き込むことになりますから、初新感線で戸惑われているところを劇団員たちでうまくバックアップできればいいですね。まあ、今回のポイントとしては、まずはやはり早乙女兄弟が二人揃って出ていただけること。兄弟での参加は『蒼の乱』(2014年)以来ですが、当然二人の一騎打ちも楽しみでしょうし、太一くんには今回幅広い役に挑戦してもらうことになりそうですし、友貴くんにはもうここ5年ほど連続して新感線に出てもらっていますから、もうほぼ劇団員扱いです。物語の刺激剤として、話を締めてくれるのではないかと思われます。そしてもうひとつのポイントが、久保史緒里さんと山本千尋さんという新感線初参加の女優さんをお迎えするということです。うちの劇団の公式ツイッターが「親戚の集まりのような輪の中にお二人をお迎えします」みたいなことを書いていましたが、その通りで。成志さんも含め、まるで親戚のおじさんおばさんに二人の若侍が加わり、そこに参加する若い女性もひとりは歌と踊りがうまくて、もうひとりはアクションが得意という、いいバランスで化学変化が起きそうなメンバーが見事に揃ったなと思っております。

――粟根さんの役柄的には、現時点でどう演じたいと思われていますか。

いわゆるテレビ時代劇でいうところの悪代官の立ち位置ですからね。物語のきっかけを作る立場なんですが、意外とキャラクターがかわいいんですよ。でも、そこにいのうえさんがどういう演出をつけてくるのかはまだわからないし、私もどうやればいいかは予想がつかないですね。ひとまず、成志さんと楽しく悪だくみのシーンが作れたらいいなと思っております。今から、成志さんが顔芸をするところが目に浮かびます。

――では最後に、お客様に向けてのお誘いメッセージをいただけますか。

中島かずき脚本、古田新太主演ということでは久しぶりの時代劇です。果たして古田くんが戦うのか戦わないのか、動くのか動かないのか、そして早乙女太一くんの新たな一面を見逃さないように、ぜひ劇場にお越しください。このキャストの顔ぶれを見れば予想通りでしょうが、チャンバラも多いのでどうぞお楽しみに!みんな、戦いますよ!!

profile

(あわね・まこと) 1985年『ヒデマロ2~銀河烈風斎の逆襲』より劇団☆新感線に参加。冷酷な悪役からインテリジェンス漂う役どころまで多彩なキャラクターを演じ、劇団内外で広く活躍。また、人物の観察力が鋭く、イラストも得意なことから雑誌のコラムなどでもその多彩な一面を見せる。近年の主な出演作品は、【舞台】『フェイクキラーズ』(22)、『明治座で逆風に帆を張・る!!』『りぼん,うまれかわる』『今日もしんでるあいしてる』(21)、『オリエント急行殺人事件』『浦島さん』(20)、『麒麟にの・る』『BURAI2』『+GOLD FISH』(19)【映画】『大怪獣のあとしまつ』(22)、『恐怖人形』(19)、『シン・ゴジラ』(16)、『これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫』(11)【ドラマ】『半沢直樹』(TBS・20)、『仮面ライダーウィザード』(EX・12)、『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』(TX・12)、『11人もいる!』(TBS・11)など。