池田成志

池田成志コメント
池田成志

――まずは『天號星』に出演することとなり、今の率直な思いをお聞かせください。

作品がどのようなものかというよりも、とにかく新感線に呼ばれるのが少し久しぶりで『けむりの軍団』(2019年)以来ですから、僕自身は新感線に出られるのはうれしいことなのでとても楽しみにしていました。演劇界に親戚みたいな存在って少ないんですけど、その中で唯一と言っていいくらい仲のいい集団なのでね。

――台本を読んでみて、ご感想はいかがでしたか。

実は昨日初めて読んで、まだあまり読み込めていないからダイレクトな感想になるんですが、「めんどくせえな」と(笑)。“入れ替わり”をやるのなら、ばってん不知火(『レッツゴー!忍法帖』(2003年)や『五右衛門VS轟天』(2015年)で池田が演じたキャラクター)の電撃を使ってもいいじゃんとか、それにしても古田と太一は大変だろうな、大丈夫かしらね……ってのが、今の率直な感想です。だからさっき、いのうえさんにも「きっと『必殺仕事人』のオマージュなんだろうから、最初に“いのうえ歌舞伎”!ダダーン!!とタイトルを出したら、それをバシバシッと斬り捨てて“チャンピオン祭り”!ドドーン!!と出し直してネタものにしちゃいましょうよ?」と軽く提案してみたところです(笑)。

――“いのうえ歌舞伎”を“チャンピオン祭り”に変更?(笑)

だって物語としては世話物っぽいから、舞台装置からしてより劇的にやらないと面白くならなさそうじゃないですか(笑)。なぜ僕が新感線に来ると楽しいかというと、隙間を見つけて遊ぶのが許されるからだったりするんですけど、今回の僕の役はそれを封じられてるなと。だってずーっと粟根さんと一緒の場面で自由にやれる隙がなさそうなんです。どちらかというと粟根さんがふざけて僕がツッコミみたいな立ち位置で!まあ、これは稽古が始まれば変わるのかもしれませんけどね。だいたい僕の場合、新感線に出る時はご存知のように「おまえは一体、誰の味方なんだよ!」みたいな人物になることが多いじゃないですか(笑)。しかもひとりの、はぐれものが多い。どっちの味方もできるから身軽なんだけど、今回はそうではなくあらかじめ約束された関係性がある。きっと観に来る人もどこかで俺のことは「こいつ、裏切るんじゃないか」と思っていそうだし、自分でも期待しちゃいそう(笑)。でもまあそういうことは忘れてやろうと思っています。

――今回の座組の顔ぶれについてはいかがですか?

面白そうだし、稽古が進めやすそうだと思いましたよ。そして、先ほども言った俺の自由度の低さにもつながりますが、なるほど俺はもう本当にゲスト扱いされていないんだ、とも思いました。これは、劇団員扱いだよと(笑)。まあ、一人二役の人が二人もいると絶対的に大変なんですよ。だからきっと、稽古でネタは足されていくんだろうなとは思うんですけどね。

――やはり池田さんが参加されていると、演出的な視点もお持ちなので、役者陣の助けになっていそうだと思いますが。

俺とか古田は「このほうが面白いね」とか、何気なくそういうことを言う立場だというか。見せ物という意味では物語がどんどん展開していくようにはならないといけないなという気はしていますけど、『けむりの軍団』の時はそれがうまいことできていて、最終的にスカッとするものになっていた。でも今回はそういうスカッとするものではないですね。まあでも結果的には、なんとかなるとは思います。それだけの推進力がある劇団だし、公演期間も長いですけどその間も楽しめるように作っていける劇団でもあるので。だって新感線なのに毎日決まりきった芝居をやってても仕方ない、なるべくならより面白い時代劇をと思っています。俺としてはどうやって楽しむかだけを考えていて、単にお芝居をまとめる側の人にはなりたくなくて。本当は壊すほうをやりたいので。そして「どうせおまえ壊すんだろ?」と思われてもいるし。もう、十何回もそうしてきてみんな知っていますからね。「なんか言ってるけど、どうせ壊すくせに」って。でも、それはそれでやりますけどね。全体が振り回されたり翻弄されたりしないと、ドラマが面白くならないと思うので。

――では最後に、お客様に向けてお誘いのメッセージをいただけたらと思います。

現在のところは、みなさんが期待している感じとはもしかしたらちょっと違うかもと危惧してはいますが、おそらくみなさんが思っているものを裏切りつつも、ああやっぱり新感線だなと思ってもらえるものに……なるのかもしれないし、ならないかもしれない。さあどっちでしょう(笑)。ぜひ、それを確かめに劇場にいらしていただければ幸いでございます。

profile

(いけだ・なるし) 1982年より第三舞台に参加し俳優活動を開始。2013年、イキウメ『獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)』 および、NODA・MAP『MIWA』での演技が高く評価され、第48回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。様々な舞台作家・演出家の作品に出演し、信頼と評価を得ている。近年の主な出演作は【舞台】『新ハムレット』(23)、『歌妖曲~中川大志之丞変化~』『奇跡の人』(22)、『鴎外の怪談』『夜への長い旅路』(21)【映画】『遠いところ』(23)、『渇水』(23)、『妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』(22)【ドラマ】『雲霧仁左衛門6』(NHKBSP・23)、『離婚しようよ』(Netflix・23)、『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(EX・22)、『青天を衝け』(NHK・21)、『緊急取調室』(EX・21)、『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK・21)など。劇団☆新感線には『けむりの軍団』(19)以来、本作が14作目の出演となる。