早乙女太一

早乙女太一コメント
早乙女太一

――久しぶりの新感線の現場ですが、撮影に参加して感想はいかがですか?

なんだか懐かしかったです、『けむりの軍団』(2019年)以来ですから4年ぶりになるんですよ。これまでは2、3年おきのペースで出させてもらっていたので。って、そう言えるほど、劇団☆新感線が定期的に帰ってくる場所になっているんだなということを改めて思います。台本を読んでもとにかくすごく安心できたんですよね。新感線に出る時はいつも、余計なことは何も考えずに身を投じるだけでいい状況でもありますし。だけど30代に入ってからは初めての新感線で、僕もここ2年半くらいはあまり身体を動かしていなかったもので。『天號星』の前に自分の劇団公演がありますから、そこでなるべく身体を戻してから新感線に臨むつもりです。

――台本の感想はいかがでしたか?

今回は、僕の身体の中に古田さんが入ってくるということを想像するだけで、すごく……イヤです(笑)。男としてはいわゆる“入れ替わり”の設定だったら可愛くてきれいな女の子と入れ替わることにロマンを感じるじゃないですか。その初体験の相手が古田さんなのか!と思うとショックが大きいです。

――入れ替わり後は、古田さんを演じることになるわけですよね。

とりあえず一歩でも古田さんに近づくためには、どうしたらいいのか考えています(笑)。実は以前からずっと池田成志さんが「俺、ニセ太一をやりたい」って言っていたんですよ。『髑髏城の七人』の蘭兵衛役の時みたいに身体を斜めにして構える感じを、よく楽屋で真似してみせてくれてて。なんだか妙にボソボソ喋りながら(笑)。それもいつか見てみたいと思っていたんですけどね。

――古田さんとまた殺陣ができることに関してはどうですか。

僕は『けむりの軍団』が最後になるんじゃないかと思っていたんですよ。だって古田さんそんなに長生きするように見えないですから(笑)。でもまだまだ元気だってことですよね。またご一緒できてうれしいです。前回の経験を踏まえて、今回はちょっと新しいこともできそうだなと想像しています。

――前回ご一緒してみていかがでしたか。

毎日、気が抜けなかったです。正体がつかめないんですよ、ちゃんと覚えてるのか覚えてないのかもよくわからないし(笑)。だけど殺陣が始まるとやっぱりすごかった。そしてすごく楽しかった記憶があります。

――そもそも、憧れだとおっしゃっていましたものね。

もともと僕は、新感線の舞台で殺陣を見たことで大きく影響を受けた人間なので。だけど今回の僕の役ってめちゃくちゃ残忍というか冷酷なキャラクターに思えるので、そこはそのまま古田さんのイメージ通りでもいい気がします(笑)。逆に僕の身体が古田さんになった時はとりあえず、あまり動かないようにすればいいんじゃないのかな。だってふだんから古田さんって舞台上でどうやって動かないでいられるかを考えていそうじゃないですか(笑)。でもそれが妙な色気になっていたりするから、ズルいなと思うんですけどね。

――今回の共演者の顔ぶれについてはどう思われましたか。

新感線に初参加の女性お二方が新しい色になりそうだな、と思っています。

――特に山本千尋さんとはドラマ『封刃師』(2022年)で共演されていましたね。

舞台でもぜひ共演したかったんで、このタイミングで叶って嬉しいです。あの、すさまじくキレのある中国武術の華やかさは、新感線の舞台にめちゃくちゃマッチすると思うので。

――今回の舞台に向けてご自分の課題や目標は。

全然ないです。というか、新感線に出る時って意気込まなくて済むんですよ。安心感の中で、ただ身を投じればいいだけですから。いのうえさんの演出を受け、楽屋で成志さんのダメ出しを聞き、古田さんからたまにアドバイスをもらい……みたいな感覚で、自分で考えることがあまりないというか、とりあえず手ぶらで行けばいいかみたいなところがあって(笑)。つまりそれくらい、新感線を信頼しています。振り返ると自分が13歳くらいの時、仮面ライダーとかウルトラマンの次に憧れたのが、たぶん新感線なんです。だからさっきもヴィジュアル撮影をしながら、「今日も長くかかりそうだなー」とか思いつつも「でも昔は自分がここにこうして立てるなんて想像もしてなかった。そこに立てているなんて幸せなことだよな」と思ったりしていました。あといつも「次に出る時は成長した姿を見せたい」と毎回思っていて。自分の劇団ではないんですが、それに近い感覚は抱いているんですよね。今回は、これまでとは全然違う役どころをいただけた気もしているので、そこは存分に楽しみたいと思っています。外部公演に兄弟で出させてもらうこともなかなかないことですし、友貴は友貴で新感線のおかげで成長したことを自分でも感じているだろうし。とにかく僕たち二人からすると新感線は子供の頃からの憧れだったので、そこに二人掛かりで挑めることはやはり嬉しいです。そういう今までの新感線に対する僕なりの思いも、今回は古田さんの背中を借りながらバシバシぶつけていくつもりです。お話もすごく奇想天外で面白いので、みなさんぜひ観に来てください。

profile

(さおとめ・たいち) 大衆演劇「劇団朱雀」の二代目として4歳で初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野武監督の映画『座頭市』に出演したことで、“100年に1人の天才女形”としてその名を広く知られることとなる。2015年の劇団解散以後は、舞台やドラマ、映画出演など活躍の幅を広げている。2019年の「劇団朱雀」復活公演より二代目座長として総合プロデュースを手掛け、23年には2年半ぶりに『祭宴』を上演した。近年の主な出演作品には、【舞台】『蜘蛛巣城』(23)、『SHIRANAMI』(19)【映画】『仕掛人・藤枝梅安』(23)、『狐狼の血 LEVEL2』(21)【ドラマ】『バツイチ2人は未定な関係』(EX・23)、『親愛なる僕へ殺意をこめて』(CX・22)、『六本木クラス』(EX・22)、『封刃師』(ABC/EX・22)など。劇団☆新感線には『けむりの軍団』(19)以来、本作が7作目の出演となる。