高田聖子

高田聖子コメント
高田聖子

――『天號星』への出演のお話が来た時の、率直なお気持ちは。

自分自身のことも含めなんですけれども、年齢のことを考えると古田さんや成志さんとご一緒できるのもあと何回かわかりませんからね(笑)。先輩方とご一緒できる時は、なるべく参加しておきたいと思っております。早乙女兄弟も出会った頃はまだ10代だったのに今やすっかり頼もしくなっちゃって。これからも面倒を見てもらうためにはさらに仲良くなっておかなければ!という思惑もありまして。

――確かに、初参加時は10代でしたね。

あの頃はコーラばかり飲んでいたのに、今じゃビール飲むんですから。あんなに「ご飯のおかわりを!おかわりをください」って白いご飯ばっかり食べていたのにねえ(笑)。

――(笑)。そして、今回の台本を読んでみてご感想はいかがでしたか。

落語みたいだな、と思いました。古田さんと太一くんが入れ替わることもなんですが、私が演じる弁天のセリフにも「嘘の中にこそまことはある」という言葉があるように、今までだったら、たとえば不思議な出来事や呪文にしても“本当にあるもの”として扱っていたように思うんですけど、そういうことを今回は“なんだかよくわからないもの”として扱って、そっちのほうが私にはしっくりくるなと思ったんです。今までだと整合性とまでは言わずとも答え合わせをつけていたところも、今回は何が本当なのかわからないままだったりしますしね。

――まったくのファンタジーなのかと思いきや、リアルな感じもちゃんと残されていて。

そうなんです。きっとあの時代は、そういう不思議な出来事に今よりも頼ったり、すがったりしていたんじゃないかなとも思うんですよ。

――真っ直ぐに信じることもできたでしょうし。

それのせいにすることも容易にできましたしね。入れ替わりの楽しさみたいなことも、こういうお話を落語でやったら面白そうだなと。今、中身はどっちになっている?みたいなね。今回複数の人間が演じるわけですので、そこを面白くできたらいいですよね。

――そんな物語の中で高田さんが演じる弁天は。

渡り占い師、です。今日のヴィジュアル撮影での格好を見ると「一体、私は何者なんだろう?」と思いましたけど(笑)。何歳なんだろう、本当に久保史緒里さん演じるみさきを私が産んだんだろうか、だって今日の扮装、ほぼヒッピーみたいでしたから。どこまでが本当のことかはわからないですよね。

――高田さんご自身にとって、今回の公演に向けての課題や目標はどんなことでしょうか。

これはいつものことなんですけれど、突拍子もない設定や役柄にもそれなりのリアリティを、ということでしょうか(笑)。そして、できれば面白く、ということです。

――そこは、大事ですね(笑)。

実際に「そういう人、いるだろうな」とか「そんな風に考えるものだよね」とか「この時代ならきっとそんな人いたかもね」と思っていただけたらうれしいですね。だけど江戸の元禄時代のお話で、本当に誰も知らないことですから。

――何の証拠もないですし。

そしてたぶん、全部嘘だし(笑)。ちょっと昔の人は、不思議な出来事をもっと日常的なこととして考えていたと思うんですよ。今みたいにスピリチュアルとか特別視するのではなく、生活に根ざしていたものもあったんじゃないのかな。農業とか、食べものを仕込む時期とかにしても、引き潮や満ち潮、月の満ち欠けに合わせてやっていたり、シャーマン的な人だって今よりももっといっぱいいたでしょうしね。

――今、特に楽しみに思っていることはありますか。

台本を読んだ時、全員野球みたいな感じを受けたんです。それは、なんだか楽しいなと思って。誰かひとりのエピソードだけが物語を進めていくのではなくて、登場人物それぞれがみんなで絡まりながら進んでいくというか。

――各自の思惑もありつつ、全員で一丸となって転がっていくような。

しかもそれは善意の部分が多くて、そこも面白い。悪意とかたくらみ、欲望がどんどん絡まりあっていくお話は多いですけれども、今回は「良かれと思って」ということも絡んでいくので、その点も人情モノらしくて。だから、落語っぽいなと思ってたのかもしれません。とにかく時代劇の面白さもありそうだし、殺陣がお好きな方ならもちろん戦う場面も多いですし、人情的な展開もあれば当然笑いもありますし。それでいてちょっと大人っぽい公演になったらいいな、とも思うんです。私たちももう、闇雲に突っ走るだけの年齢ではなくなりましたから。ぜひとも落ち着いて、オモシロと向き合っていきたいものです(笑)。

profile

(たかだ・しょうこ) 大学在学中にスカウトされ、1987年『阿修羅城の瞳』より劇団☆新感線に参加。1995年に自身が立ち上げたプロデュースユニット「月影十番勝負」・「月影番外地」の公演も定期的に行い、16年には『どどめ雪』で第51回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。近年の主な出演作品は、【舞台】『アンチポデス』『THE PRICE』(22)、『ベイジルタウンの女神』(20)、『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』(19)、『森から来たカーニバル』『夢の裂け目』『江戸は燃えているか』(18)、『空中キャバレー2017』『俺節』(17)【映画】『嘘八百 なにわ夢の陣』(23)、『アイ・アム まきもと』(22)、『罪の声』『死神遣いの事件帖-傀儡夜曲-』(20)、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)、【ドラマ】『拾われた男』(NHKBSP・22)、『元彼の遺言状』(CX・22)、『結婚できないにはワケがある。』(ABC・21)、『エール』(NHK・20)、『春が来た』(WOWOW・18)など。