羽野晶紀
コメント

羽野晶紀

――劇団員がここまでオールスターで集まる本公演『爆烈忠臣蔵』に出演することになっての、今のお気持ちはいかがですか。

劇団の45周年の舞台には、みんな一緒に出られるといいな~と思っていたから「本当に良かった!」と思いました。いのうえさんも(中島)かずきさんも含めて、ここまでみんな揃うことはもうないかもしれないし。ちゃんと揃うのかなってちょっと心配だったから、ホント良かった!

――タイトルには『忠臣蔵』が入っていますが、今回のお芝居の内容を聞いた時はどう思われましたか。

『忠臣蔵』は有名なお話だし「いっぱい登場人物がいるのにどうすんのやろ?」と最初は思っていたんですけど。台本を読んでみたら、『忠臣蔵』をそのまんまやるわけじゃなかったから「なるほどな~」と思いましたし、『忠臣蔵』なのにやっぱり面白い人たちがいっぱい出てくるから、そういう意味でも「良かった!!」と思いました。

――羽野さんは『忠臣蔵』という演目自体に思い入れがあったりしますか?

まあ、『忠臣蔵』は観るもの、ですね。そもそも時代物だと当たり前に、女性が演じられる役がそんなにないですから。誰かの奥さん、とかになっちゃうだろうし。だから、もちろん機会があったらそりゃあやりたいですけど、まあでも大抵は観るものですよ。でも冬になってきて年末になると、どこかでやってたりしますよね、そうすると、なんだかソワソワしません?

――年末だなあ、とか思って?(笑)。

物語の展開は知っているのに、若い子はともかく、おじちゃんおばちゃんはどうしてあんなにみんな好きなんでしょうね。それに、誰が大石内蔵助をやるのかな、あの人が演じるならまた観てみたいね、となりますよね。とか言いつつ私は本当のところ、まだ、忠臣蔵を語るには素人です(笑)。でも本当にあった話だと思うと、大変な時代だったんだな、その時代に生まれなくて良かったなとも思います。みんな命がけだし、後で切腹させられたりするし、怖いですよ。でも、それをのちに役者が演じる時代がやってくるわけだから、なんかすごいですよね。これまでなぜか新感線では、やっていなかったんでしょう? だったら、いいね、やろうやろう!(笑) 新感線だから、ちゃんとストレートにはやらないんだろうけど、やりましょう!!

――その中で、羽野さんが演じるのは黒爛太夫、おゆみさんです。古田さんの妻役ですね。

はい、芝居小屋のおかみさんみたいな役ですね。それにしても私、古田さんと舞台でご一緒するのはすっごい久しぶりで。もう20何年ぶり、とかです。

――ちょっと感慨深いものがありそうですね。座組全体の顔ぶれを見て、思うことは。

長い年月が経っているはずなんですけど、でも実はそんなにピンと来ていなくて。親戚みたいな人たちで、みんな同じように年とってて。ゲストの方々は、(早乙女)太一くんとは『月髑髏』(『髑髏城の七人』Season月 2017年)の時に稽古は一緒でしたけどチームが違うから共演はしていないし、向井さんとも(小池)栄子ちゃんともご一緒するのは初めてなんです。だけど新感線の常連さんたちですから、どうも初めてじゃないように感じてしまって。なので、初共演だからといってドキドキすることもなく、逆に早くもヌクヌクしてる。劇団員の中には後輩もいっぱいいるんだけど、私自身は先輩たちの中に入ると一番年下だから、先輩たちに可愛がられていた後輩の時の気持ちのまんまでヌクヌクしてる。

――昔と同じ感覚でいられる場所なんですね。他の舞台に出る時と新感線に出るのとでは。

全然、違います! 『月髑髏』に出た時、体力的にはめっちゃしんどかったんだけど、楽し過ぎたし、とにかく環境の良さにびっくりしたんです。周りが全員プロフェッショナルで、何の心配もなくて。

――新感線の裏側って、ホスピタリティが素晴らしいですからね。

そうなの。だって、私が現役だった頃は自分らで全部やってましたから。その後、どこの現場に行っても、いまだにあれ以上しんどかったことになんて出会ったことないですから。寝ずに舞台を仕込んで、チラシの挟み込みも掃除も自分らでやって。その時代を経験してるだけに、舞台に立つことだけに集中できた『月髑髏』のバックステージは「何これ、楽し過ぎるやないか、新感線なのに?!」ってなってました。しかも今回は、舞台が廻って走り回るわけでもないし、あの時ほどしんどいこともないと思うから「あとはもう、なんかおもろかったらええわ!」ってなってます(笑)。

――羽野さんご本人としては、今回の公演で目標とかあったりしますか?

もちろん、その土地ごとに観に来てくださるお客様と一緒に毎回記憶に残る公演をやりたいと思っています。そしてやはり、ここまでみんなが揃う舞台も次はいつになるかわからないですからね。私としてはこの長い公演期間中に、全員とご飯に一緒に行く! 自分でも「なんだ、その目標?」と思っていますけども(笑)。

今回は芝居バカのお話ですが、あなたは何バカですか?

私の場合もともと、スタートからずっと継続してバカだから。って、そういう話じゃないか(笑)。でも、そういうそもそもバカの私が、お芝居に出会ってしまったから、さらにバカになっていて。バカは芝居をすることで超越したバカになったほうがいいんですよ。そうすると、あまりバカじゃなくなるんです。芝居の時は、いろいろなことをちゃんと考えてるしね、考えてない風に見えるかもしれないけど。とにかく今回はいつもよりもっと炸裂したい、いや違う、爆烈しましょう! 

中島さんといのうえさんに稽古前に言っておきたいこと

私は松本での公演が初めてなので、ぜひ美味しいものを食べさせてほしいです! あとは、自分の中ではやっぱり言うてもね、みんなは先輩だし、かずきさんといのうえさんは作家先生と演出家なんで、何を言われても絶対なわけですよ。それは何年経っても変わらないの。そんな二人が稽古場で笑ってたりすると安心するから、そこが稽古の最初のハードルで。まずはそこを越えなきゃって思っています。そういうことですので、とりあえず初日の幕が開いたら、松本でみんなで美味しいものを食べようよ!って、お伝えください(笑)。

profile

(はの・あき) 1968年8月22日生まれ 京都府出身 大学在学中の1987年『BOYS IN THE ATTIC~闇夜はドッキリ!』から劇団☆新感線に参加。バラエティ番組に多数出演し、CDデビューもするなど関西のアイドル的存在に。その後、活動の幅を全国へと広げ、女優としても映像や舞台で幅広く活躍。現在は「よ~いドン!」(KTV)にパーソナリティとして毎週金曜日レギュラー出演中。毎週土曜日放送「大阪おっさんぽ」(TVO)ではナレーションを担当。17年の『髑髏城の七人 Season月<下弦の月>』で17年ぶりに劇団☆新感線公演に出演し話題となった。近年の主な出演作に、【舞台】『⼀富⼠茄⼦⽜焦げルギー』(26年1月開幕予定・24・23・22)、『ひまわりの歌〜ヘブンズ・レコードからの景⾊〜』(25)、『千と千尋の神隠し』(24)、『NOISES OFF』(23)、『Q:A Night At The Kabuki』(22・19)、『INTO THE WOODS』(22)、【映画】『1秒先の彼』(23)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)、『スープ〜生まれ変わりの物語〜』(12)、【ドラマ】『北くんがかわいすぎて手に余るので、3人でシェアすることにしました。』(25・KTV)、『相棒 season23』(25・EX)、『なにわの晩さん! 美味しい美味しい走り飯』(23・ABC)などがある。