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倉持 裕

(くらもち・ゆたか)94年、俳優として岩松了プロデュース公演に参加したことをきっかけに、岩松了に師事し執筆活動を開始。 00年劇団ペンギンプルペイルパイルズを旗揚げ、作・演出すべてを務める。 物事を独自のシニカルな視点で切りとり、しっかりとしたストーリー展開を保ちながら、絶妙な台詞の応酬と間で観客を引きつける力を持つ。
ペンギンプルペイルパイルズ 第6回公演『ワンマン・ショー』にて、04年度第48回岸田國士戯曲賞を受賞。 舞台戯曲、演出、ドラマ執筆、ドラマ企画監修など分野を問わず活動し、注目作を生み続けている。 近年手掛けた劇団以外の舞台作品に、『現代能楽集Ⅶ 花子について』作・演出、『わたしを離さないで』脚本、『鎌塚氏、振り下ろす』作・演出(14)、『もうひとり』作・演出、『ライクドロシー』作・演出)、『フランケンシュタイン』上演台本、直人と倉持の会vol.1『夜更かしの女たち』作・演出(13)、『鎌塚氏、すくい上げる』作・演出、『英国王のスピーチ』上演台本(12)などがある。

【受賞歴】
第48回岸田國士戯曲賞(『ワンマン・ショー』の脚本において)

「いのうえさんからオファーをいただいた時には「派手なことはできませんよ」と一応断りを入れさせていただきつつ、それでもよければぜひ!ということでお受けしました。かつて凄い腕を持っていた人物が年齢的に枯れて、ゼイゼイと息切れをさせながら無我夢中で斬り合う……そんな場面で古田さんがしんどそうに刀を振っている姿をイメージしながら、この老盗の物語を書き上げました。 江戸時代の設定である程度リアルに描きたかったので、貨幣価値や当時の風俗、物語の舞台となる浅草や日本橋の地理や距離感などを正確に知るために資料にあたるのがなかなか大変ではありました。でも誰かが誰かのために命を賭けるという人情を描くことに、あまり理由をつけずに説得力を持たせられるのが、こういう時代劇の良さだと思います。
最後の最後に待つ大立ち回りまでは主に会話劇になるので、演じる側もお客様もそこまで息を止めていられるかがポイントとなります。きっちりと演技ができる新感線の劇団員の方々なら、この繊細な人間ドラマ、心の機微みたいなものを丁寧に演じてくれるはず。
そしてそれをいのうえさんがどう演出されるのかを僕自身もとても楽しみにしています」

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演 出

いのうえひでのり

1980年劇団☆新感線を旗揚げ。以来、劇画・マンガ的な世界観にあたかもコンサート会場に来ているようなド派手な照明と音響を用いた構成で、演劇ファンのみならず音楽ファンをも虜にしてきた。 笑いに特化した活劇の“ネタもの”では脚本も手がける。 時代活劇の“いのうえ歌舞伎”ではアクションとケレン味を効かせた演出に、ドラマのうねりをのせた独特の手法で、小劇場の枠を超えた新しいエンターテインメントの形として“新感線”というジャンルを確立させた。 04年の『髑髏城の七人』『SHIROH』の演出において日本演劇協会賞、06年の『メタルマクベス』の演出において千田是也賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している。 近年の劇団公演以外の演出作に、歌舞伎『阿弖流為』(15)、『鉈切り丸』『今ひとたびの修羅』『断色』(13)、『ロッキー・ホラー・ショー』(11-12)、『斷食』(11)、『怪談 牡丹燈籠』(09)、初めて本格的にシェイクスピア作品に取り組んだ『リチャード三世』(08-09)等プロデュース公演の演出も多数手がけている。

【受賞歴】
第14回日本演劇協会賞(『髑髏城の七人』『SHIROH』の演出において)
第 9 回千田是也賞(『メタル マクベス』の演出において)
第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞
第50回紀伊國屋演劇賞個人賞(『熱海殺人事件』の演出に対して)

「いのうえ歌舞伎をファンタジー寄りの物語ではなく、リアルに、生活感のある、いわゆる“なんちゃって”ではない本格的な 時代劇でやってみたいということは以前から思っていました。ここ最近は『五右衛門vs轟天』しかり、大人の新感線の『ラストフラワーズ』しかり、とにかく笑いに重きを置く芝居が連続していたので、今回はカッコよくキメた芝居をやろう!ということですね。
本格派時代劇というのはやはり自分にとってもチャレンジですので、ここは絶対的に信頼できるゲストをキャスティングさせていただきました。
そしてM&Oplaysプロデュースの『鎌塚氏シリーズ』(2011年~)で純粋なエンターテインメントも書いておられる倉持くんに、今回初めて声をかけさせていただいたわけです。脚本は第1稿からとても面白かったので、自分自身も今からワクワクしています。
そして、実は劇団本公演のいのうえ歌舞伎に劇団員がここまでフルメンバーで揃うということは、この先しばらくは実現しないと思われます。その点からも今回は貴重な公演と言えますので、みなさんどうぞお見逃しなく!!」

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