2019年、今年は劇団☆新感線の旗揚げ39周年であると同時に、主演であり劇団の看板俳優、古田新太が入団してから35年目にあたる記念の年でもあるのです。まさにその35年間という長きにわたり苦楽を共にしてきた劇団主宰で演出のいのうえひでのり、出会いから約30年の仲である池田成志に、このベテラン勢の中では一番の若手となってしまう今作の脚本の倉持裕も加わり、昔話に花を咲かせつつ、夏秋公演の『けむりの軍団』への想いを語っていただきました。
 
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いつ引退してもいい。そうしたら、ブルートレインで日本一周でもしようかな。(古田)
――この中で古田さんと一番付き合いが長いのはいのうえさんですね。お二人の最初の出会いは?

いのうえ

そもそもは、渡辺いっけいが連れてきたんですよ。

古田

あと、ジャンキー鈴木も一緒でした。

いのうえ

あ、そうだ、そうだ。南河内万歳一座に鈴木くんという、すごく上手な俳優さんが当時いたんですよ。プロレスとボクシングが大好きな人でね。

古田

そのジャンキーさんと一緒にお芝居をやっていたのを、いっけいさんが観に来て。「新感線から、人数が足りないから年下でイキのいい奴を連れてこいって言われてるんだ!」って誘われたんです。「ギャラ出るぞ、モテるぞ、仕事バンバン入って来るぞ~」って。

いのうえ

ハハハハ。

池田

嘘ばっかり。

一同

(笑)
――池田さんと古田さんも、かなり古い仲ですよね。

古田

サードステージプロデュースの『大恋愛』(1988年)からだよね。確か23歳、劇団に入って5年目の頃だったかな。

いのうえ

それが最初だったんだ。
――この30年の間で、お互いの印象が変わることなんてありましたか。

古田

まったく変わっちゃいませんよ。

池田

そういえばこの間、古田の面白いインタビュー記事を読んだよ。方向性がどうとかって。
――方向性が、変わったんですか?

古田

いや、方向性自体は変わってないということを確認した、という話だったんじゃないかな。いろいろやっていこうと思いながら30代、40代を過ごして。だけどもう今は、好きなことしかやりたくないという“終(つい)の生活”に入ったようなものだと。だって充分いろいろやったし、夢もだいたい叶っちゃったしなあ。

池田

なにその言い方。おまえ、もう死ぬんか(笑)。
――結構、もう満足しちゃんったんですか。

古田

いつ引退してもいい。そうしたら、ブルートレインで日本一周でもしようかな。

いのうえ

ああ、でもブルートレインのチケットってなかなか取れないらしいよ。

古田

そうみたいなんですよね。

池田

それって、高級なヤツでしょ。

古田

そうそう。
――本当に、ブルートレインに興味があるわけではないんでしょう?

古田

いや、興味はありますよ。だけど予約するとなると、2年後、3年後のチケットになっちゃうって言うから。

いのうえ

九州一周する電車とかもあるんでしょ。

池田

って、これ、何の話だよ(笑)。

古田

いやあ、だって35年もがんばったんだから、寝台電車の旅に出てもいいなあって思ったんですよ。

いのうえ

いいよね、確かに。

池田

鈍行電車で上京していたキミたちが、そんなことを言うようになったんですか。

古田

そうそう、当初は東京公演のために“青春18きっぷ”でみんな揃って上京していましたからね。一升瓶を抱えて、品川で降りてしまったりしてた。

いのうえ

ハハハハ。
なかなか、できないことですから。ただ立っているだけでカッコイイ、というのは。(倉持)
――倉持さんは、古田さんと初めて一緒にお仕事したのが『乱鶯』(2016年)だったんですね。

倉持

はい、仕事ではそうですね。その前から面識はありましたけど。
――初対面はいつですか。

倉持

僕、ラジオなんです。『開放弦』(2006年)というお芝居の時に、その宣伝で古田さんのラジオの番組に出していただきまして。その時が初めてでした。
――古田さんは当時、倉持さんのことを。

古田

認識してた、してた。ペンギンプルペイルパイルズとか観に行ってて、しっかりした脚本を書く人だなと思っていたので。だから新感線に脚本を書くことになったって聞いた時は、「おおっ?」ってビックリした。
――倉持さんは、舞台俳優としての古田さんにはどんな印象をお持ちでしたか。

倉持

もう、尊敬しかないです。理想的な立ち方をなさる方だなと思っていましたし。

古田

それも、無手勝流(むてかつりゅう)でね。

倉持

そうです、そうです、無手勝流です。まあ~、本当にカッコイイですからね。

古田

“何もしない”ということをしているわけだから。

倉持

なかなか、できないことですから。ただ立っているだけでカッコイイ、というのは。
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